ヒルトの溝切りはヤスリで作業すると時間がかかるし、
なかなかピッタリには出来ません。
そこで私が使っているのがマトリックスアイダ製の
スリットゲージというもの。
製品には3mm、4mm鋼材用とありますが、ヒルトを作りたいナイフが
3mmピッタリ・4mmピッタリでない場合でも、スリットゲージと
ヒルト材の間にシムを入れて厚みを調整すれば対応できます。
まず、ヒルト材に罫描を入れます(下図左)。
罫書線にかからないように溝幅より1mmほど小さいドリルで穴あけ(下図右)。
次にスリットゲージにヒルト材を挟みバイスでしっかりとくわえます。
注意点としてヒルト材に傷がつかないように革などでバイスの口金を養生すること。
(イラストでは養生などは省略しています)
傷がつくとその面がゲージに当たるので、溝の幅の寸法が広くなってきます。
(ヒルト作成ガイド=スリット・ゲージのことです)
金鋸で底面の罫書線まで切り込みます。
反対側も同様にすると、アッという間に溝の荒加工ができます。
少し時間はかかりますが鋸刃は32山などの細かい刃を使うこと。
山が粗い刃だと、仕上がった時にも鋸目が残ってしまう場合があります。
(鋸刃の弾性でゲージ側へも刃が食い込むためだと思います。)
次にヒルト材の切りこんだ側がけっこう広がっていますので、
これをバイスで挟んで締め込み、元の寸法まで戻します。
寸法を確認しながら少しずつ戻します。
もし元の寸法より小さくなってしまったら、大きめの
マイナスドライバーなどで慎重に広げます。
ゲージがヒルト材自体の整形寸法にたよっているため、
きちんと寸法を戻さないと正確な溝幅寸法がでません。
あとはゲージ面とツライチになるまでヤスリで根気よく仕上げてゆきます。
ヤスリに角度がつくとゲージに当たるので、仕上がり寸法直前までは
ゲージなしで作業するか、ヒルト材にシム(紙など)を敷いてゲージが
当たりにくいようにすると作業は早くなります。
ヒルトの底面に近くなってくると、なかなか寸法が出ないと思いますが、
これはヤスリの面のわずかな丸みのせいかもしれません。
ヤスリが大きいと傾けてもヤスリ面がゲージに届かない場合もあります。
(イラストではバイスは省略していますが、ちゃんと挟んで作業します。)
底面付近の寸法が出ないときは小さいヤスリで仕上げます。
ヤスリを小さくすればほとんど削れますが、それでも残ってしまう角部分は
ブレードの方の噛み合う側に丸みやC面をつけると良いと思います。
宣伝めいてしまいましたが、このスリットゲージは
ヤスリでヒルトの溝切りをされる方にはオススメです。
上手に使えば機械加工に負けない精度で溝が切れます。
ただし、注意して作業しないと切粉や削り粉が隙間に入り込み、
ヒルトの前面(仕上がって見える部分)に傷がつく場合があります。
その傷を消すために磨き込むとヒルトが細くなってしまい、
ブレードとヒルトの噛み合い部分に隙間ができます。
個人的にはブレード側は僅かに小さめに噛み合う溝の寸法を決めて、
後からヒルトの幅を削って嵌め合いを調整しています。